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Apple、Gemini搭載の新Siriを発表——AI戦略が転換点へ

AppleがWWDC 2026でGoogleのGeminiを基盤とする完全再構築版Siriを発表。年間約10億ドルのライセンス契約のもと、1.2兆パラメータモデルを採用し、iOS 27と連携。iPhoneのAI体験が根本から変わる歴史的転換点を詳しく解説。

AppleがGemini搭載の新Siriを発表——iPhoneのAIが根本から変わる

2026年6月8日、カリフォルニア州クパチーノのApple Parkで開催されたWWDC 2026において、Appleは同社のAI戦略における最大の転換点を世界に向けて発表した。GoogleのGeminiモデルを基盤とした完全再構築版Siriの登場は、テクノロジー業界の勢力図を塗り替えかねないほどの衝撃を与えている。

2011年にiPhone 4Sとともに颯爽とデビューしたSiriは、その後しばらく進化が停滞し、ChatGPTやGemini、Claudeなど生成AIの台頭によってその遅れが一層際立っていた。Appleは2024年に次世代Siriの計画を発表したものの、度重なる延期によって投資家や消費者の不信感を招いてきた。今回のWWDC 2026は、そうした「約束と現実のギャップ」を埋めるべく、Appleが全力で臨んだ舞台となった。

Gemini搭載Siriの全貌——1.2兆パラメータの巨大AIが中核へ

今回発表されたSiriの最大の特徴は、Googleとの多年にわたるパートナーシップのもとで開発されたApple Foundation Models(AFM)の採用だ。Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるCraig Federighiは基調講演の中で次のように述べた。

「今年、私たちはGoogleと深くパートナーを組み、GeminiファミリーのモデルのテクノロジーをGemini活用して、次世代のApple Foundation Modelsを共同開発しました。」(Craig Federighi、WWDC 2026基調講演より)

技術的な核心は、1.2兆パラメータのカスタムGeminiモデルにある。このモデルはMixture-of-Experts(MoE)設計を採用しており、クエリごとに関連するパラメータのサブセットのみを起動する仕組みだ。これにより、1兆パラメータ規模の知識容量を保ちながら、シンプルなモデルに匹敵する低レイテンシを実現している。このモデルはApple独自が構築していた最大クラウドモデルと比較して約8倍の規模を誇る。

新しいSiriの3層ルーティングシステム

新しいSiriは、3段階のルーティングシステムを採用している。

  1. オンデバイス処理:タイマーのセットやアプリの起動など、シンプルなタスクはApple独自のモデルがデバイス上で処理する
  2. Private Cloud Compute:中程度の複雑さのリクエストは、AppleのプライベートクラウドコンピューティングサーバーへルーティングされAppleのモデルが対応する
  3. Google Cloud(Gemini):最も高度な推論タスクは、Google Cloud上のNvidia Blackwell B200 GPUで稼働するGeminiへルーティングされる

各ステップにおいて、AppleはクエリをAnonymize(匿名化)してトークン化しており、AppleスタッフもGoogleも個々のユーザーのリクエストを追跡できない設計になっている。

ビジネス視点——年間約10億ドルの戦略的投資

Bloombergのマーク・ガーマン記者の報道によれば、AppleはGeminiのライセンス料として年間約10億ドル(約1,500億円)をGoogleに支払う見通しだ。一見すると巨額に思えるが、ビジネス観点では合理的な判断と評価する声も多い。

あるアナリストは、Appleは「Googleに使用料を払うだけで済む」と述べており、他の多くのテック企業が自社AI開発に莫大な資金を投じているのとは対照的に、Appleはそのコストを回避できるという見方を示した。

また業界関係者は、Appleがこの戦略によって、オンデバイス推論、プライバシーインフラ、そしてApple Intelligenceを競合他社から差別化する統合レイヤーの開発にAI予算を集中させられると指摘している。自社単独で現在のGeminiに匹敵するモデルを開発しようとすれば、数年かつ大幅に高い設備投資が必要になる——その現実を踏まえた苦渋の決断とも言える。

株式市場の反応は複雑だった。Apple株はWWDC発表後に約2%下落したものの、Geminiパートナーシップが1月に発表されて以降、投資家・アナリストの支持を背景に株価は直近で過去最高値に迫る水準まで上昇していた経緯がある。

消費者・生活者視点——Siriは何が変わるのか

一般のiPhoneユーザーにとって、最も直接的な恩恵はSiriの実用性の劇的な向上だ。新しいSiriは以下のような能力を持つ。

  • クロスアプリ操作:メール、メッセージ、カレンダーなど複数アプリを横断したタスクを自動処理
  • オンスクリーン認識:画面上の情報をSiriがリアルタイムで理解し、文脈に沿ったアクションを提案
  • パーソナルコンテキスト理解:例えば「お母さんのフライトと昼食の予約はどうなっている?」といったMailやMessagesの情報を横断した複合質問に回答できる
  • Visual Intelligence:カメラアプリに統合され、物体、テキスト、シーンを指すだけで文脈的な応答やアクションが得られる
  • エージェント機能:Passwordsアプリがウェブサイトを自動的にナビゲートし、パスワード変更時に認証情報を更新するなど、自律的なワークフロー実行が可能

さらにiOS 27では、iPhone 11以降の全てのiPhoneモデルに向けてAI機能のシステム統合が強化され、Siriはダイナミックアイランドに常駐するインターフェースとして再設計されている。

ただし、最初のバージョンは英語のみ対応で秋にベータとして提供される予定であり、当面は中国と欧州連合(EU)市場では利用できない制限がある点は注意が必要だ。

専門家の見解——AI市場における歴史的転換

業界の専門家たちは、このパートナーシップが持つ意味をさまざまな角度から分析している。

プライバシーの観点からは懸念する声もある。セキュリティ企業Cipheroのナカシュ最高経営責任者は、「Private Cloud Computeは最も弱いリンクと同程度のプライバシーしか保証できない」と指摘し、GoogleがモデルのデバッグやAI改善を目的に使用データにアクセスできる経路が残る場合、プライバシー保証は根本的に崩れると警告している。

これに対しAppleは、技術的な暗号化プロトコルを詳述したホワイトペーパーを公開し、独立した研究者によるPrivate Cloud Computeの検証も受け入れている。Tim Cookも「私たちはプライバシーのルールを変えない」と明言しており、Appleのプライバシーファーストの姿勢は変わらないとしている。

また、独占禁止法の観点でも注目を集めている。AppleはGoogleとの検索エンジンのデフォルト設定を巡る米司法省(DOJ)の反トラスト訴訟と、今回のGemini提携が交差することによる規制リスクを抱えている。

国際比較——AI覇権争いの新たな構図

このApple-Googleの提携は、グローバルなAI市場の勢力図にも大きな影響を及ぼしている。

Googleは既にAndroid向けに「Gemini Intelligence for Android」を展開しており、今回のAppleとの提携によって、世界で最も普及した2大モバイルプラットフォームの双方でGeminiが中核AIとなる前例のない状況が生まれつつある。Googleは2025年に2009年以来最高の業績を記録し、2026年1月にはAppleの時価総額を2019年以来初めて上回った。今回の契約は、GoogleのAI戦略における勢いをさらに加速させる可能性がある。

一方でOpenAIとの関係にも変化が生じている。AppleとOpenAIは2024年にChatGPTをSiriや各OSに統合する提携を結んでいたが、報道によればOpenAIはAppleとの「緊張した関係」を理由に法的措置を検討しているという。GeminiがSiriの中核体験を担う中、ChatGPTの役割は今後縮小していく可能性が指摘されている。

中国市場では当面提供されないことから、中国国内でのAIアシスタント市場では引き続き百度(Baidu)のERNIEやAlibaba系のモデルが主導権を握る状況が続くとみられる。

今後の展望——注目すべき3つのポイント

1. iOS 27と新型iPhoneの秋リリース

WWDC 2026で発表された全ての機能は、秋に新ハードウェアとともにリリースされる予定だ。新型iPhone 18と同時に提供されるiOS 27では、完全な会話型Siriが実装され、20回以上の往復対話が可能になるとされている。「メールからフライト情報を探して、遅延がないか確認し、Uberドライバーに更新情報をテキストで送って」といった複雑なマルチステップタスクの自動実行が現実のものとなる。

2. Tim Cook退任後の新体制でのAI戦略

今回のWWDC 2026はTim CookにとってCEOとしての最後の基調講演となった。Cookは2026年9月1日付でCEOを退任し、ハードウェアエンジニアリング担当役員のJohn Ternusが後任を務める。新CEOのもとでApple-Google AI連携がどのように深化・拡張されるかが、次の大きな注目ポイントだ。

3. 開発者エコシステムへの影響

AppleはiOS 27においてサードパーティAI統合向けの「Extensionsマーケットプレイス」を計画しており、開発者がGemini搭載Siriのインフラ上にアプリを構築できるプラットフォームが誕生する見通しだ。Apple Foundation Modelsフレームワークは、Geminiをエンジンとして採用することで大幅に強化された自然言語理解・推論・生成能力をAPIとして提供し、App Storeの次なる成長ドライバーとなる可能性がある。

まとめ

  • 歴史的なAI戦略転換:AppleはWWDC 2026で、GoogleのGemini(1.2兆パラメータ)を基盤とした完全再構築版Siriを発表。年間約10億ドルのライセンス契約のもと、iOS 27(秋リリース予定)で一般提供される。
  • プライバシーと性能の両立を主張:3層ルーティングシステムとApple Private Cloud Computeにより、Geminiの高度な推論能力を活用しながら、ユーザーデータをAppleやGoogleに紐付けない設計を採用。ただし独立した専門家からはプライバシーへの懸念も示されている。
  • AI業界の勢力図に変化:AppleとAndroidという世界2大スマートフォンOSでGeminiが中核AIとなりうる状況が生まれ、GoogleのAI覇権が一段と強固になる一方、OpenAIとの関係悪化やChinaおよびEU市場での制限など、課題も残る。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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