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総合商社2026年3月期決算:伊藤忠が最高益9000億円超で首位奪還

三菱商事・三井物産・伊藤忠商事ら大手総合商社5社の2026年3月期決算が2025年5月2日に出そろった。伊藤忠商事が純利益9,003億円と初の9,000億円超を達成し過去最高益で首位奪還。非資源事業の強化・生成AI活用・エネルギー事業拡大が明暗を分けた決算となり、2027年3月期は全社増益予想で株主還元強化も注目される。

総合商社2026年3月期決算が出そろう——伊藤忠が9,000億円超の最高益で首位奪還

2025年5月2日、大手総合商社5社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)の2026年3月期決算が一斉に発表された。資源価格の下落と円高というマイナス要因が重なる中、各社の「非資源事業」への注力度が明暗を分けた歴史的な決算となった。最大の焦点は伊藤忠商事が初めて純利益9,000億円の大台を突破し、5年ぶりに商社トップの座を奪還したことだ。日本経済の実力を映す「商社決算」は今、新たな局面を迎えている。

各社の最終利益と主要トピック

伊藤忠商事:初の9,000億円超、2期連続最高益で首位奪還

伊藤忠商事は2026年3月期の純利益が9,003億円となり、過去最高益を更新した。前期比では増益率こそ小幅にとどまったものの、非資源分野の手堅さが光る結果となった。ファミリーマートを筆頭とした生活消費分野の好調に加え、タイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの持ち合い解消に伴う株式売却益約880億円、北米電力事業の増益、青果物大手ドールの黒字転換などが利益を押し上げた。また、純利益に占める資源比率がわずか約14.8%と5社の中で最も非資源志向が強く、資源価格変動の影響を最小化できたことが首位奪還の最大の要因と見られる。2027年3月期の通期見通しでは、さらに純利益9,500億円の最高益更新を見込む。

三菱商事・三井物産:一過性要因と資源安が響き減益

かつての1位・2位コンビである三菱商事は純利益8,005億円三井物産は8,340億円と、いずれも前期比で減益となった。三菱商事については、前期の豪州原料炭事業売却益の剥落やローソン持分法化の影響が大きく、また純利益に占める資源比率が50%超であるため、資源価格下落のダイレクトな打撃を受けた。ただし2027年3月期については三菱商事が最終利益1兆1,000億円という強気なV字回復計画を発表しており、再び熾烈な首位争いが繰り広げられる見通しだ。三井物産も来期は増益と大幅増配を計画しており、一時的な調整局面と位置づけられている。

住友商事・丸紅:非資源で安定成長

住友商事は「エネルギートランスフォーメーション」や「都市総合開発」といった非資源分野が業績を牽引し、資源比率は約13.7%と5社中最低水準に抑えられた。丸紅も食料・アグリなど非資源分野の土台が厚く、資源比率は約29%にコントロールされており、高い増益率を示した。両社とも非資源事業の安定した収益基盤が奏功した格好だ。

決算の鍵を握った「非資源事業」と「生成AI活用」

今回の決算で最も注目すべき構造変化は、非資源事業の成長が商社の新たな収益柱として確立されつつある点だ。2020年代初頭に資源価格高騰で過去最高益をマークした各社は、その後「資源依存からの脱却」を急ピッチで進めてきた。

また、生成AIの活用も各社の競争力強化において重要なテーマとなっている。伊藤忠商事はブレインパッドと共同で「生成AI研究ラボ」を設立し、企業の業務変革や新規ビジネス開発支援を推進。丸紅は2023年に社内向けチャットボット「Marubeni Chatbot」を開発し、年間10万時間の作業時間削減を実現した。三菱商事も2025年度を目処にAI特化型研修を本格展開し、全社的なデジタル人材育成を加速している。住友商事はMicrosoft Copilot for 365を導入し、日常業務へのAI組み込みを進めている。

さらに、電力・エネルギー事業が成長の牽引役として期待されている。伊藤忠商事の北米電力事業増益に加え、丸紅は洋上風力発電プロジェクトを通じた国内外での独立系発電事業者(IPP)としての地位を強化している。2050年カーボンニュートラル目標に向けた再生可能エネルギーへのシフトが、各社の中長期的な成長エンジンになると見られる。

ビジネス視点:商社の収益構造が「非資源主導」へ転換

今回の決算は、総合商社のビジネスモデルが大きな転換期を迎えていることを示している。京都大大学院経済学研究科の田中彰教授は、各商社が「バリューチェーン戦略」を推進していると指摘する。これは個別事業の収益だけでなく、上流・下流との相乗効果も含めた「つながり全体」で価値を取りにいく指針であり、もはや総合商社は単なる手数料を得る流通業者ではなく、投資先で実際に事業を運営するノウハウが求められる存在になっている。

  • 伊藤忠商事:「利は川下にあり」の哲学のもと、ファミリーマート・ドール・セブン銀行提携など生活消費・金融・決済分野での基盤固めを加速
  • 三井物産:豪州ローズリッジ鉄鉱石事業権益取得(約8,000億円)など川上領域の資源・エネルギーへ引き続き大型投資
  • 三菱商事:川上・川下のバランスを重視しながら、PE(未公開株)ファンド案件など新たな投資機会を模索
  • 住友商事:グループのSCSK完全子会社化(約8,820億円)などデジタル・IT分野への積極投資
  • 丸紅:新社長のもと「時価総額10兆円」という挑戦的な目標を掲げ、食料・アグリ・電力分野を牽引

トランプ米政権の関税政策については、各社とも直接的な影響は「限定的」と見ている。米国内で完結する地産地消型ビジネスが多いことがその理由だ。一方、三井物産の堀健一社長は「企業が原材料などの代替を検討する状況ではチャンスがある」と述べ、サプライチェーン再編を商機と捉える姿勢を示した。三菱商事の中西社長も「PEファンドが投資を控える案件がポツポツ出ている。不安の裏返しで投資の機会が増える可能性はある」と前向きな姿勢を見せた。

消費者・生活者への影響

総合商社の好業績は、私たちの日常生活にも直接・間接的に影響を及ぼす。

  • コンビニ・食料品の充実:伊藤忠商事が展開するファミリーマートや、青果物大手ドールの黒字化により、身近な食品・小売サービスの質の向上や新サービス展開が期待される
  • 電力・エネルギー価格の安定:再生可能エネルギーへの大型投資が進むことで、中長期的なエネルギーコストの安定や脱炭素化に貢献する可能性がある
  • 雇用と給与水準:5大商社の平均年収は2025年3月期時点で全社が1,700万円超と高水準を維持。2021年3月期の平均1,467万円から2025年3月期には5社平均1,857万円まで上昇しており、高給与業界としての地位を保っている
  • 株主還元の強化:伊藤忠は今期1,700億円の自社株買いを予定。丸紅も自社株買いを400億円追加するなど、個人投資家への還元が充実している
  • AI・デジタルサービスの普及:商社各社が生成AIやDX投資を加速することで、消費者向けの新サービスや利便性向上が期待される

専門家の見解:「非資源の実力値が問われる局面」

「非資源分野が各社とも着実に成長している。市況や為替などのげたを除いた基礎収益部分は継続的な成長余地があるのではないか」(UBS証券・五老晴信アナリスト)

「伊藤忠商事は即戦力型投資を重視することで、着実に利益を積み上げてきている。首位定着の可能性は十分にある」(東海東京インテリジェンス・ラボ・栗原英明シニアアナリスト)

UBS証券の五老晴信アナリストは、アメリカの利下げや財政出動、景気刺激策などで世界のマネーが動けば総合商社には追い風となるとし、「景気敏感株としてしっかりメリットを受ける側に立つはず」と指摘。ただし、追い風の後に問われるのは各社の戦略の中身と実効性だとも強調している。

また、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは「今後50年は売却を考えないだろう」と五大商社株の長期保有継続を表明しており、海外の機関投資家からも総合商社の事業価値は高く評価されている。

国際比較:世界の資源・エネルギー商社との競争環境

日本の総合商社と類似したビジネスモデルを持つ海外企業として、スイスのグレンコアトラフィグラなどのコモディティ商社が挙げられるが、日本の総合商社が優位を保つのは「資源×非資源」の複合ポートフォリオと、アジアを中心とした強固なサプライチェーンネットワークだ。

国際エネルギー機関(IEA)の試算では、2026年までにAI専用データセンターからの電力需要が2023年比で10倍超に拡大する可能性があるとされており、エネルギー供給事業を展開する日本の総合商社にとっては追い風となる。エネルギー分野における生成AIの世界市場は、2025年の11億8,000万ドルから2026年には14億7,000万ドル(CAGR24.1%)へと急拡大が見込まれており、商社のエネルギー×デジタル領域への投資が中長期的な競争優位につながると期待されている。

今後の展望と注目ポイント

2027年3月期(2026年度)に向けた各社の通期見通しでは、7大商社全社が増益予想を掲げており、商社セクター全体としての回復と成長が見込まれる。特に注目されるポイントは以下のとおりだ。

  1. 三菱商事のV字回復:2027年3月期に最終利益1兆1,000億円を目指す強気計画。実現すれば伊藤忠商事との首位争いが再燃する
  2. 伊藤忠商事の非資源戦略の深化:セブン銀行との提携、伊藤忠食品完全子会社化など生活消費・金融分野への積極投資を継続。純利益9,500億円を目指す
  3. 生成AI・DX投資の加速:各社が業務効率化から新規事業創出まで生成AIを活用する体制を整備中。デジタル人材育成も喫緊の課題
  4. エネルギートランスフォーメーション:脱炭素化・再生可能エネルギーへのシフトが加速する中、IPP事業や洋上風力などへの投資が各社の中長期成長を支える
  5. 地政学リスクへの対応:トランプ関税や米中摩擦を背景としたサプライチェーン再編を、グローバルなネットワークを持つ商社がどう商機に変えるかが焦点
  6. 株主還元のさらなる強化:累進配当・自社株買いを継続する各社の姿勢が、投資家からの評価を高め株価の底上げにつながるか注目される

まとめ:今回の決算の3つのポイント

  • 伊藤忠商事が純利益9,003億円で初の9,000億円超を達成し5年ぶりに商社首位を奪還。非資源比率の高さが資源価格下落局面に強さを発揮した
  • 三菱商事・三井物産は一過性要因と資源安で減益も、来期はV字回復計画。商社業界は「非資源主導」への構造転換が鮮明になりつつある
  • 生成AI活用・エネルギー事業・株主還元強化が各社共通の成長戦略。世界的なAI電力需要拡大や脱炭素化の波が、商社の次なる成長エンジンとして期待される

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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