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ホンダ中国生産能力を大幅削減、3.2兆円損失で事業再編加速

ホンダが中国での生産能力を年間149万台から約96万台へ大幅削減。BYDなど中国EV勢の急台頭でエンジン車販売が激減し、3.2兆円規模の損失を計上。工場閉鎖・人員削減を進める一方、EV専用工場新設や新EVブランド「烨(イエ)」投入で中国市場の構造転換を急ぐ。日本メーカーの中国戦略が転換点を迎えている。

なぜ今、ホンダの中国事業が岐路に立つのか

かつて世界最大の自動車市場・中国で162万台超を誇ったホンダが、今や存亡をかけた構造転換を迫られている。中国EV市場におけるBYD・ファーウェイなど地場メーカーの急速な台頭が既存の日本メーカーのビジネスモデルを根底から揺さぶっており、ホンダの中国生産能力削減はその象徴的な出来事として自動車業界に衝撃を与えている。

単なる一時的な販売不振ではなく、内燃機関(ICE)車から新エネルギー車(NEV)への構造的シフトが加速する中、ホンダは今、「撤退」ではなく「生存のための変革」を迫られている。

生産能力削減の全容:149万台から約96万台へ

ホンダが中国で進める生産能力削減の規模は、日系自動車メーカーの中でも最大級だ。

  • 削減前の年産能力:149万台(中国7本の生産ライン)
  • 削減後の年産能力:約96万台(エンジン車)+EV専用工場24万台
  • 削減対象工場:広汽ホンダ(広州汽車との合弁)第4工場(2024年10月閉鎖)、東風ホンダ(東風汽車との合弁)第2工場(2024年11月休止)

具体的な数字を見ると、2025年3月期中に生産能力を96万台まで削減し、さらに新たに立ち上げるEV専用工場24万台分が上乗せされる見通しだ。2025年のホンダの中国生産は68万台で、ピーク時から実に6割近く落ち込んでいる。

販売台数の急落:5年連続の下落

販売面でも深刻な状況が続いている。中国EV市場の最新データが示す実態は厳しい。

  • 2020年(ピーク):162万7,000台
  • 2021年:156万1,500台
  • 2022年:137万3,100台
  • 2023年:123万4,200台(前年比▲10.1%)
  • 2024年:85万2,300台(前年比▲30.9%)——初めて100万台を下回る

2024年の年間販売台数は前年比30.9%減と急落し、ホンダの中国販売が100万台を下回ったのはこれが初めてのことだ。2025年に入っても1〜7月の累計販売台数は前年同期比23.2%減の35万9,969台と、5年連続の販売減が続いている。

なぜここまで失速したのか:中国EV市場の構造変化

ホンダの苦境は、単独の問題ではなく中国自動車市場全体の劇的な変化によるものだ。ホンダのCFOは「想定以上に内燃機関(ICE)搭載車の市場が減り、新エネルギー車(NEV)の市場が増えた」と述べ、中国ではハイブリッド車(HEV)を含むICE搭載車の需要が前年比で約3割落ち込んでいると明かした。

競合他社との比較が事態の深刻さを物語る。2025年7月単月の販売台数を見ると:

  • BYD:20万台超(ホンダの約4.5倍)
  • Geely(吉利):20万4,900台
  • Chery(奇瑞):18万1,000台
  • ホンダ:4万4,817台(前年同期比▲14.75%)

また、中国の新エネルギー車(NEV)の市場普及率は2025年上半期に44.3%に達しており、EVとPHVが中国市場の主流になりつつある中、ホンダのNEV販売比率は依然として低水準にとどまっている。

ビジネス視点:企業・経営者にとっての意味

ホンダの中国事業縮小は、財務・経営両面に深刻な打撃を与えている。

巨額損失と業績への影響

2025年3月期の4輪車世界販売目標は、期初の412万台から380万台へ2度にわたり下方修正された。当期利益も9,500億円(前期比▲14.2%)へ引き下げられており、中国事業の不振が業績全体の足を引っ張る構図が鮮明だ。ホンダの青山真二副社長は「販売減は想定以上にスピードが速い」と述べており、追加の生産能力削減や人員の適正化を前提にパートナー企業と交渉を続けていることを明かした。

雇用・サプライヤーへの波及

工場閉鎖・休止は現地従業員にも直撃した。広汽ホンダでは2024年5月に希望退職の募集を開始し、全従業員の約14%にあたる1,700人が応募したとされる。さらに、ホンダの減産は日系の部品サプライヤーの経営にも深刻な影響を与えており、関連企業を含めたサプライチェーン全体に構造転換の波が及んでいる。

EV専用工場への投資継続

一方、ホンダはガソリン車工場の削減と並行して、武漢・広州でEV専用工場(合計24万台の生産能力)の稼働を開始している。ガソリン車の資源をEV事業へ集中させる「選択と集中」戦略により、単なる撤退ではなく事業構造の転換を目指している。

消費者・生活者視点:一般の人々への影響

ホンダの中国事業再編は、消費者の視点からも注目すべき変化をもたらしている。

  • 新EVブランド「烨(イエ)」シリーズの展開:中国の現地開発チームが「In China, For China」の方針でゼロから開発。2024年末に「烨P7」「烨S7」を発売し、2027年までに合計6車種のEVを投入予定。
  • 価格競争力の変化:電動コンパクトSUV「S7」は89.8kWhのバッテリーを搭載し、最大404マイル(約650km)の航続距離で25万9,900人民元(約36,000ドル)から。テスラModel Yに真正面から挑む価格設定だ。
  • 既存モデルの行方:CR-V、ブリーズなど従来の人気モデルは販売台数が落ち込む一方、ハイブリッドモデルのZR-VやHR-Vの改良版投入も続いている。

専門家・アナリストの見解

「ホンダも日産も販売の減少幅が大きい中国市場が最大の懸念事項だ。両社とも中国市場における固定費負担を少なくともいくらかはカバーするために大幅な生産能力削減を行うことになる」

——マッコーリー・グループ アナリスト、ジェームス・ホン氏(Bloomberg TV、2024年12月)

また、ホンダの経営幹部も危機感を隠さない。ホンダ執行副社長の海原宣也氏は、「タイなど(東南アジアの)市場でも競争が激化しており、価格競争力を失っている」と述べ、中国EV勢の脅威がアジア全域に及んでいることを認めた。「中国以外のアジア市場は中国の自動車セクターの低迷から切り離されていると考えていたが、その前提はもはや成り立たない」とも語っている。

自動車業界の標準的な稼働率の「望ましい水準」は約80%とされる中、ホンダの中国工場の稼働率は大幅にそれを下回っており、固定費の圧縮が急務となっている。

国際比較:日産・トヨタなど日系メーカーも同様の苦境

ホンダの苦境は日系メーカー全体に共通する課題だ。日産も中国での前期生産台数が近年のピーク時からほぼ半減し、約72万台の余剰生産能力が生じているとされる。日産は世界での年間生産能力を100万台引き下げ400万台にする計画を打ち出し、中国を除く稼働率72〜73%に対し、中国の不振が際立っている状況だ。

さらに広い視野で見ると、フォード、GM、ステランティス、フォルクスワーゲン、現代自動車グループなど、世界の大手自動車メーカーがこの18カ月間でEV投資の削減・製品遅延・プログラムの中止を相次いで発表している。ホンダ自身も2030年のグローバルEV販売比率の目標を従来の30%から20%に引き下げており、電動化投資を従来の10兆円から7兆円に圧縮している。

中国市場は、かつて外資ブランドの牙城だったものが、急速に国内メーカーが支配する戦場へと変貌した。BYDは2024年に383万台のEV・PHVを販売し、国内EV市場の覇権を握っている。

今後の展望:注目すべき5つのポイント

  1. EV専用工場の量産立ち上げ:武漢・広州のEV専用工場(合計24万台)の本格稼働状況と、新EVブランド「烨」シリーズの市場浸透度が今後の中国事業の命運を握る。
  2. 追加生産能力削減の可能性:現在の96万台規模の生産能力も販売ペースに対して過剰であり、さらなる削減を前提にパートナー企業との協議が続いている。
  3. 日系サプライヤーへの連鎖影響:ホンダの生産縮小は、中国に進出した日系部品メーカーの撤退・縮小を促す可能性がある。
  4. HEV戦略の中国展開:2027年以降に次世代HEVモデルを主軸として展開する計画だが、中国ではHEVを含むICE車の需要も激減しており、戦略の有効性が問われる。
  5. 中国自動運転技術との連携:ホンダはMomenta(自動運転技術スタートアップ)と連携し、中国の道路環境に最適化した次世代ADASを全ての新モデルに搭載する方針を示している。

まとめ:この問題の3つの本質

  • ✅ 構造的・不可逆的な変化:ホンダの中国生産能力削減は一時的な調整ではなく、ICE車からEV・NEVへの不可逆的な市場構造変化への対応。ピーク時162万台から2024年に85万台超へ急落した販売数がその深刻さを物語る。
  • ✅ 「縮小」と「転換」の同時進行:ガソリン車工場を閉鎖する一方でEV専用工場を新設・稼働させるという「スクラップ&ビルド」戦略は、撤退ではなく中国市場での生き残りをかけた構造転換。中国現地開発の新EVブランド「烨」シリーズの成否が試金石となる。
  • ✅ 日本の自動車産業全体への示唆:ホンダの苦境は日産・三菱自動車など日系メーカー全体が直面する課題の縮図。中国EV勢の競争力はアジア全域に波及しており、日本の自動車産業の競争戦略の根本的な見直しが急務となっている。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

タグ

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