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JASRAC、AI生成楽曲の著作権管理方針を明示――「人間の創作的寄与」が鍵

日本音楽著作権協会(JASRAC)がAI生成楽曲の著作権管理ガイドラインを公表。歌詞・楽曲の両方をAIが生成した作品は管理対象外、人間が一方を創作した場合は人の創作部分のみ管理するという方針を明確化。AI音楽著作権・生成AI著作権・著作権法改正の動向を詳解します。

AIが変える音楽の著作権——JASRACがついて明確な線引きを示した

生成AI技術の急速な普及により、誰でも手軽に楽曲や歌詞を生成できる時代が到来した。しかし、その利便性の裏には著作権という大きな問題が横たわっている。「AIが作った曲は誰のものか」「既存の楽曲を学習したAIが生み出す曲に権利侵害はないのか」——こうした疑問に対し、日本音楽著作権協会(JASRAC)がついに明確なガイドラインを公表した。

2026年6月、JASRACは公式サイト内に生成AIと著作権に関する特設ページを立ち上げ、AI生成楽曲の管理方針を広く公示した。音楽業界のみならず、AI開発者、コンテンツクリエイター、そして一般利用者にも直接影響する今回のガイドライン。その内容と意味を多角的に読み解く。

JASRACが示したガイドラインの全貌

「人間の創作的寄与」が管理の基準

今回JASRACが示したガイドラインの核心は、「人間の創作的寄与の有無」という一点に集約される。

具体的には、以下の三つのパターンに分けて管理方針が整理されている。

  1. 歌詞・楽曲の両方をAIが自律的に生成した作品:著作物に該当しないため、JASRACの管理対象外。
  2. 歌詞か楽曲の一方をAIが生成し、もう一方を人間が創作した作品:人間が創作した部分のみ管理の対象となる。
  3. AIを道具として活用しつつ、人間が主体的に創作した作品:著作物として認められ、通常どおりJASRACが管理できる。

例えば、作詞がAI生成・作曲が人間の場合、曲のみの利用時は管理率100%、詞のみの利用時は0%となる。また、J-WID(作品データベース)では、人間が創作した部分の所属団体は「JASRAC」、AI制作部分は「AI」と表示される仕組みだ。これは、著作権が切れたパブリックドメイン作品との組み合わせと同様の扱いとなる。

著作者詐称には法的責任が伴う

ガイドラインではさらに、AIが自律的に生成した作品(著作物でない作品)を著作者を詐称して届け出た場合は、保証義務違反となり委託者に法的責任が生じると明記されている。JASRACに楽曲を委託する際は、人間が正当に著作権を保有していることの保証が必要となり、虚偽の届出は許されない。

また、AIを利用したかどうかに関わらず、作品が既存の著作物に類似していると著作権侵害の問題が生じるおそれがあると注意を促している。著作権侵害が認められれば、損害賠償請求・差止請求にとどまらず、刑事罰の対象にもなり得るという点も強調されている。

なぜ今、このガイドラインが重要なのか

著作権法第30条の4が引き起こす「空白地帯」

現行の著作権法では、生成AIの開発のための機械学習は、原則として権利者の許諾を得ることなく行うことができる(著作権法第30条の4)とされている。これにより、クリエイターは「自分の作品を利用してほしくない」という意思表示を汲んでもらう機会すら持てない状況が生じている。

JASRACが2026年に実施した音楽クリエイター向けアンケートでは、生成AIへの自作品の利用について「反対」「どちらかといえば反対」と回答したクリエイターが過半数を占めたにもかかわらず、著作権法第30条の4がある限り、AI事業者にはこの声を聴く法的義務はない。こうした矛盾した状況が、JASRACがガイドライン策定と同時に法改正を求める声を高めている背景にある。

「AIに関する音楽団体協議会」の発足

JASRACを含む音楽に関わる9団体で構成する「AIに関する音楽団体協議会」が設立され、クリエイターやアーティストの権利保護とAIの適切な利活用の観点から意見を表明した(2025年12月)。この協議会は、音楽分野での生成AIの利活用について提言や検討を行っていく組織であり、業界が一体となって対応策を構築しようとしていることを示している。

ビジネス視点:企業・経営者にとっての意味

今回のガイドラインは、音楽を活用するすべての企業・事業者にとって無視できない内容を含んでいる。

  • BGM・広告音楽のAI活用リスク: 広告やプロモーション動画のBGMにAI生成音楽を使用している企業は、その楽曲が「著作物」として認定されるかどうかを改めて確認する必要がある。
  • コンテンツプラットフォームの対応義務: YouTubeやTikTok等の動画プラットフォームでは、AI生成楽曲の使用・配信に関するポリシーが強化されている。J-WID上での表示変更に伴い、プラットフォーム側の権利処理も複雑化する可能性がある。
  • AI音楽サービスの事業者: Sunoなどの音楽生成AIサービスは既に海外で著作権侵害訴訟に直面しており、日本国内でもJASRACの方針明確化によって法的リスクが高まると見られる。
  • 音楽出版社・レーベル: AI生成曲が混在する状況で、管理楽曲の品質保証と法的リスク管理のコストが増大する可能性がある。

特に注目されるのは、「AIを道具として使用した人間の創作」という概念の広がりだ。プロンプトに独自性のある創作的選択を盛り込んだり、AIが生成した楽曲を編集・調整したりする行為は、著作権が認められる方向で整理されつつある。これは、AI音楽制作ツールを積極活用する企業にとってはポジティブな整理と言えよう。

消費者・生活者視点:一般の人々への影響

一般の音楽ファンやアマチュアクリエイターにとって、今回のガイドラインはどのような意味を持つのだろうか。

  • AI音楽サービスの利用規約に注意: SunoやUdioなどのAI音楽生成サービスでは、無料プランと有料プランで著作権の帰属先が異なる。無料プランで生成した楽曲は運営側に著作権が帰属し、商用利用ができないサービスが多い。
  • 「完全AI生成曲」の公開リスク: SNSや動画サービスにAI完全生成曲をアップロードする際、それが著作物として保護されないことを理解したうえで行う必要がある。
  • 人間の創作的関与の記録が重要: AIを活用して楽曲を作った場合でも、自分がどのような創作的判断をしたか(プロンプトの工夫、編集作業など)を記録しておくことが、権利保護につながる。
  • 既存楽曲の無断模倣リスク: AIが偶然に既存曲と類似したメロディを生成してしまうケースもあり、意図せず著作権侵害となる可能性も否定できない。

専門家の見解:業界はどう受け止めているか

JASRACの伊澤一雅理事長は2024年5月の定例会見において、「権利者が自分の作品を学習に使うことを応諾または拒否できることを基本として、どう学習に使うかを議論しないといけない」との見解を示した。単なる管理方針の策定にとどまらず、著作権法そのものの抜本的見直しを求める姿勢が明確だ。

JASRACは文化庁への意見書の中で、「著作権制度は人間の個性の発露としての創作を奨励するためのものであって、機械による生成を奨励するためのものではない」という原点を重視するよう求めている。AI生成物と人間の創作物を同列に扱うことへの強い懸念が示されている。

法律の専門家の視点からも、著作権法第2条が定める著作物の定義(「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの」)の解釈が、AI時代に改めて問われていることが指摘されている。完全にAIが生成した楽曲は、利用者の思想や感情を創作的に表現したものとは言えず、著作物には該当しないというのが現状の共通認識だ。

国際比較:海外ではどう動いているか

AI音楽の著作権問題は日本だけの課題ではない。国際的な動向を見ると、各国・地域で対応が進んでいる。

  • 米国: 2024年6月、全米レコード協会(RIAA)がAI音楽生成サービス「Suno」「Udio」を著作権侵害で提訴。また、Sony Musicは75,000件もの楽曲削除要求を行い、AIの無断学習データ使用と生成楽曲の既存楽曲との酷似が問題の核心となった。米国著作権局はAI単独生成物への著作権付与を認めない方針を維持している。
  • EU: AI法(AI Act)の施行と並行して、生成AIの学習データの透明性確保と著作権保護の両立が議論されている。著作権者への情報開示義務などが検討されている。
  • G7共通の課題: JASRACは「生成AIの学習に伴う著作物の利用について、著作権を制限する法的枠組みを持つ国はG7の中で日本だけ」という問題意識を示している。G7広島首脳コミュニケが掲げた「責任あるAIの推進」「透明性の促進」の観点から、国際的なルール整合性が求められている。

日本独自の著作権法第30条の4の存在は、国際的に見ても異例であり、この点が今後の法改正議論における最大の焦点となっている。

今後の展望:注目すべきポイント

JASRACのガイドライン公表は、AI音楽著作権問題における重要な一里塚だが、今後も注目すべき動きは続く。

著作権法第30条の4の改正動向

JASRACは「著作権法第30条の4の改正も含めた抜本的な対応を早急に行う必要がある」と主張しており、今後の国会審議や文化審議会での議論が焦点となる。クリエイターが学習への利用の可否を判断できる「選択の機会の確保」が実現するかどうかが最大の注目点だ。

AI生成楽曲の「識別・透明性」の技術的整備

J-WID(作品データベース)でのAI制作部分の表示開始は、音楽著作権管理における透明性向上の第一歩だ。今後、AIと人間の協働比率を定量的に評価するための技術標準や、AI生成楽曲の識別技術(電子透かし等)の導入も議論になる可能性がある。

AIによる既存クリエイターへの影響

AI生成音楽の爆発的な普及により、特定のクリエイターや著作物に対する需要がAI生成物によって代替されてしまうリスクが高まっている。この点についてJASRACは深刻な懸念を示しており、「創造のサイクルを守る」観点からの法制度整備が急務となっている。

まとめ:今回のポイント

  • 📌 JASRACは「人間の創作的寄与の有無」を軸に、AI生成楽曲の著作権管理方針を明確化。歌詞・楽曲の両方がAI生成の場合は管理対象外、人間が一方を創作した場合は人の創作部分のみ管理する。
  • 📌 現行の著作権法第30条の4はAIの無断学習を原則許容しており、JASRACはこの条文の改正を含む抜本的な法制度見直しを強く求めている。2026年のクリエイター向けアンケートでも過半数がAI学習への反対を示した。
  • 📌 国際的にも米国のSuno・Udio訴訟やEUのAI法整備など動きが加速しており、G7の中でも特異な立場にある日本の著作権法改正の行方が世界から注目されている

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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