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KDDI、楽天への回線貸し出し「役割終えた」9月末で終了へ

KDDIの松田浩路社長が楽天モバイルへのローミング(回線卸貸し出し)契約について「役割を終えた」と発言。2026年9月末に期限を迎える契約の終了が現実味を帯び、楽天モバイルユーザーのエリアカバレッジや通信品質への影響が懸念される。国内通信インフラの競争構図が大きく変わる分岐点となる可能性がある。

「補助輪の役割を終えた」——KDDIが楽天への回線貸し出し終了を示唆

2026年、日本の通信業界に大きな転換点が訪れようとしている。KDDIの松田浩路社長が、楽天モバイルに対して行ってきた回線の貸し出し(ローミング契約)について、「当初の役割を終えた」との認識を公式に示した。現在の契約は2026年9月末が期限であり、その後の契約更新については両社が交渉中とされるが、KDDIの姿勢は終了に向けて大きく傾いている。この動きは、携帯各社のシェア争いのみならず、日本の通信インフラ全体の競争構図を塗り替えかねない重大な局面だ。

ローミング契約とは何か——その歴史と背景

そもそも、今回の問題の核心となる「ローミング契約」とは何か。ローミングとは、ある通信キャリアのユーザーが、他の通信キャリアの基地局を利用して通信できる仕組みのことだ。

楽天が携帯電話事業に新規参入した2019年から、楽天は自社の基地局整備が十分でないエリアで、KDDIの回線を借りてサービスを展開している。当初、楽天モバイルは全国をカバーする基地局ネットワークを持っておらず、KDDIの回線を「補助輪」として使うことで、サービス提供エリアを確保してきた。

KDDIは、国内通信事業者の健全なサービス競争の促進に寄与することを目的に、楽天モバイルが提供する第4世代移動通信サービスの立ち上げに際して、2026年3月末までを期限としてauネットワークのローミング提供を行っている。楽天モバイルは、2020年4月のサービス本格開始以降、楽天回線エリアを順次拡大し4G人口カバー率が98%に到達しており、この度ローミング協定の見直しを両社で協議した。

その後、楽天モバイルは2023年4月に新たなローミング契約を締結。新ローミング契約では、これまで含まれていなかった東京23区など都市部の繁華街エリアが新たに加わり、契約期間は2023年6月から2026年9月までの約3年間となった。

松田社長の発言——何が「役割終了」を意味するのか

携帯電話キャリアとしては後発の楽天モバイルに対して、KDDIは自社ネットワークの一部をローミングとして貸し出すことで、楽天モバイルのエリア構築を支援してきた。松田社長は「当社網へのトラフィックが想定以上」と実情を明かす。当初から、楽天モバイルへのローミングは、auユーザーに影響がないように進めてきており、混雑エリアについてはローミングを終了する方向で進めている。

松田社長はさらに踏み込んだ発言もしている。楽天への回線の貸し出しについて、松田社長は健全な通信市場をつくる上での「補助輪の役割を担った」と振り返った。

また、KDDIにとっての収益面での変化も無視できない。かつて楽天モバイルからKDDIに対しては、年間数百億円規模の接続料が支払われていた。しかし、松田社長は「中期経営戦略において、ローミング収入は収益源として考えていない」と明言している。

「9月に期限を迎えるKDDIと楽天モバイルとのローミング契約について、KDDIの松田浩路社長は『当初の役割は終えた。10月以降にどのような形で協調していけるか協議している』と発言した。」(ケータイWatch, 2026年5月)

現在進行形で進むローミングエリアの縮小

ローミング終了は9月末の「契約満了」を待つだけでなく、すでに段階的に進行している。

KDDIが楽天モバイルに回線網を貸すローミング対象エリアを徐々に減らしている。松田浩路KDDI社長は「(楽天モバイルが)自前で構築したエリアで順次終了している」と発言。自社サイトで5月末と6月時点の対象エリアを比較できるようにし、携帯電話販売店「auショップ」で対象エリア縮小を告知し始めた。

KDDIが公開している楽天モバイル向けローミングサービス提供エリアが6月1日に更新され、2026年5月末までと2026年6月以降の提供エリアを比較すると、関東、兵庫、みなとみらい、大阪、札幌、東京ディズニーランド周辺などで変化が確認できる。全体としてローミングエリアはおおむね縮小している印象だ。

KDDIのローミングで提供されるのはプラチナバンドの800MHz帯のため接続しやすく、ローミング終了によって「つながりにくい」といった現象が起きるケースは考えられる。実際、SNS上では6月以降に楽天モバイルがつながりにくくなったという声が増えており、ユーザーへの影響はすでに出始めている可能性がある。

ビジネス視点:両社にとっての意味

KDDIにとっての戦略的意義

KDDIがローミング終了に積極的な姿勢を見せる背景には、複数の戦略的理由がある。

  • 自社ネットワーク品質の維持・向上:楽天モバイルからのトラフィック流入が想定以上となり、auユーザーの通信品質に影響が出るリスクが高まっている
  • 5G投資への集中:ローミング収入への依存を脱し、次世代ネットワーク(5G・AI連携)への投資にリソースを集中させる狙いがある
  • povo等サービスへの誘導:「楽天モバイルユーザーがお困りになることがあれば、副回線や基本料金0円のpovoなどで何か支援できれば」と松田社長は語っており、自社の低価格プランへの顧客取り込みも視野に入れている
  • 通信品質ナンバーワンの地位強化:KDDIは、調査会社の英オープンシグナルがまとめた国内携帯大手4社の1〜3月の通信品質調査で4連覇を達成。僅差で2位に付けるソフトバンクとともに、都市部での通信品質を強みとする。

楽天モバイルにとっての経営課題

2019年に携帯電話事業に参入した楽天モバイルは、2023年6月に提供開始した「Rakuten最強プラン」や2025年10月1日に開始した「Rakuten最強U-NEXT」などお得感の高い料金プラン、そして「最強家族プログラム」などの割引施策が功を奏し、2025年末には1000万契約を突破するなど好調が続いている。

楽天モバイルの好調を受け、厳しい状況が続いていた楽天グループの業績も大幅に回復。2026年度第1四半期決算では、楽天モバイルが携帯電話事業に本格参入した2020年以降、初めて連結Non-GAAP営業利益が黒字化したことを明らかにしている。

しかし、そのような好調に影を落とすのがローミング終了問題だ。楽天モバイルはネットワーク整備を大幅に前倒ししてエリアを急拡大し、すでに4Gの人口カバー率は98%以上にまで広がったが、人口が少ない地方を中心に未整備のエリアが少なからずあるため、人口カバー率99.9%を超える競合と比べるとエリア面で劣ることは確かだ。

楽天モバイルは対応として、2026年に2000億円強を投じて自社通信網の増強を急いでいる。

消費者・生活者への影響

ローミング終了がもたらす最も直接的な影響を受けるのは、楽天モバイルのユーザー約1000万人だ。

  • 地方・郊外ユーザーへの影響が特に大きい:都市部では楽天自社基地局がカバーしていても、地方の山間部や農村地帯では依然KDDIのローミング頼みの地域が多い
  • 建物内・地下でのつながりにくさ:プラチナバンド(800MHz帯)を持つKDDIのローミング終了により、屋内や地下鉄・地下街での接続性が低下する恐れがある
  • 通信費の増加リスク:KDDIのpovoは数百円からの料金でサブ回線として便利とはいえ、エリア整備が遅れている地域の人だけ負担増になる不公平感が出てくる。
  • 乗り換え検討の動き:SNS上では、6月からつながりにくくなったことを理由に他社への乗り換えを検討する声が多数上がっており、実際にユーザー流出が起きる可能性がある

専門家・業界関係者の見解

ITジャーナリストの山口健太氏(Yahoo!ニュース エキスパート)は、この問題についてバランスの取れた分析を行っている。

KDDIは楽天からローミング収入を得てきたものの、通信量は想定以上に増えているとのこと。松田浩路社長は「当初の役割は終えた」としてpovoなどに誘導するアイデアを示し、ローミング終了の可能性を示唆した。一方、楽天は自社回線サービスの開始当初からKDDIローミングをフルに活用。2023年6月に始めた「Rakuten最強プラン」では、自社エリアに加えてKDDIのローミングエリアも使い放題になった。

通信業界アナリストの佐野正弘氏(マイナビニュース)は、ローミング終了後の楽天モバイルの選択肢を次のように整理している。

KDDIとのローミング契約が延長されずに終了した場合、楽天モバイルが取ると予想される手段として、①自社でネットワーク整備を進めて競合に追いつくこと、②衛星通信(AST SpaceMobile)の活用、③引き続き他社の協力(副回線サービスやpovo)を得ることが考えられる。

一方、実際KDDIが「もうローミングは必要ない」と判断したきっかけとなったのが、2026年1月27日に起こった楽天モバイルの通信障害だ。その際、かなりKDDI側に楽天モバイルのトラフィックが流れてきたことを松田社長は確認しており、「それだけエリアが重複しているということだ」と語っている。

国際比較:海外における後発キャリアのローミング戦略

後発の通信キャリアが先発大手の回線を借りてサービスを立ち上げ、自社インフラを整備しながら段階的に独立していく手法は、世界各国で見られる通信インフラ整備の定石だ。

たとえば、米国では第4の通信キャリアとして参入したT-Mobile(旧Sprint)も、AT&TやVerizonのネットワークを一部借用しながら自社5Gインフラを拡充し、現在では大手3社に肩を並べるまでになった。フランスでも2012年に参入した格安キャリアFreeが、既存大手のオレンジからローミングを受けながら急速に成長。6年以内にローミング依存を大幅に解消し、現在は独立したインフラを持つ主要キャリアとして地位を確立している。

こうした国際事例を見ると、後発キャリアのローミング依存解消は「市場の成熟」を示す一つのマイルストーンとも言える。日本の楽天モバイルがこの道をたどれるかどうかが、今後の焦点だ。

今後の展望——3つの注目シナリオ

シナリオ①:9月末でローミング完全終了

KDDIが強硬姿勢を貫き、契約更新なしでローミングが終了するケース。楽天モバイルユーザーは地方・屋内で圏外となるエリアが増え、解約・乗り換えの動きが加速する可能性がある。楽天は2000億円の設備投資を急ピッチで進める必要があり、短期的には業績への打撃が予想される。

シナリオ②:部分的・条件付きの延長

地方の人口希薄地域に限定した形で、一定期間ローミングを継続するケース。これが業界内で最も「現実的な落としどころ」と見る向きも多い。両社の「円満終了」の文脈とも整合する。

シナリオ③:衛星通信での補完

楽天モバイルが米AST SpaceMobileと連携した衛星通信で地方エリアをカバーするという選択肢もあるが、2026年4月には同社の衛星の一つが打ち上げに失敗しており、必ずしも順調とは言えない。また、データ通信が使い放題のRakuten最強プランを通信容量に限界がある衛星通信でそのまま提供するのは難しいという見方もある。

まとめ:この問題の3つのポイント

  • ①「役割終了」宣言の重み:KDDI松田社長が「補助輪の役割を担った」と振り返ったことは、2019年から続いてきた両社の協力関係の正式な終幕を意味する。KDDIはローミング収入を中期経営計画の収益源として位置づけないと明言しており、終了方向は既定路線化しつつある。
  • ②楽天モバイルは正念場:1000万契約・初の営業黒字化という好調な一方、ローミング終了でエリア品質が低下すれば、若年層中心の契約者が流出するリスクがある。2026年に2000億円超の設備投資を予定しているが、地方の未整備エリアを短期間でカバーできるかは不透明だ。
  • ③業界再編の引き金になる可能性:ローミング終了は単なる2社間の契約問題にとどまらず、NTTドコモ・ソフトバンク・KDDI・楽天モバイルの競争構図を大きく変える引き金になり得る。通信インフラ整備の在り方、規制当局の役割、そして消費者の選択肢にまで波及する重要テーマとして、今後も動向に注目が必要だ。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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