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人手不足倒産が過去最多240件|賃上げ限界で中小が危機

2026年度上半期(4〜9月)の人手不足倒産が過去最多の240件を記録。東京商工リサーチの調査で、人件費高騰が主因となり飲食業・建設業など労働集約型産業を直撃。賃上げの限界に達した中小・零細企業の経営困難が深刻化し、AI活用や業務自動化による構造改革が急務となっている。

「募集しても人が来ない」――人手不足倒産が過去最多240件を記録

日本経済が深刻な構造的課題に直面している。東京商工リサーチが2026年10月5日に発表した調査によると、2026年度上半期(4〜9月)の「人手不足」関連倒産は240件(前年同期比17.0%増)に達し、調査を開始した2013年度以降で過去最多を更新した。コロナ禍の2021年度同期の26件を底に、5年連続で前年同期を上回る増加が続いている。

かつては人材不足といえば「求人難」が主因だったが、今や構図は大きく変わりつつある。賃上げが進む大企業とは対照的に、中小・零細企業では「賃上げしなければ人が集まらない、しかし賃上げすれば経営が立ち行かない」という二律背反のジレンマが深刻化。この「賃上げ疲れ」が、新たな倒産の波を引き起こしている。

データで見る「人手不足倒産」の実態

倒産件数と内訳

東京商工リサーチの調査によると、2026年度上半期の人手不足倒産240件の内訳は以下の通りだ。

  • 人件費高騰:130件(前年同期比75.6%増)――5年連続増加で最多
  • 従業員退職:67件
  • 求人難:43件

特筆すべきは「人件費高騰」型の急増だ。全240件のうち半分以上が人件費の上昇に耐えられなくなった倒産であり、この傾向は近年加速している。

全体の企業倒産も13年ぶり高水準

人手不足倒産の急増は、より大きな倒産増加トレンドの一部でもある。東京商工リサーチが発表した2026年度上半期の企業倒産は5,373件(前年同期比3.8%増)で、13年ぶりの高い水準となった。負債総額は8,561億6,900万円(前年同期比23.5%増)と4年ぶりに増加に転じており、経営環境の悪化が数字にも如実に表れている。

業種別の動向

業種別では、サービス業が最多の1,828件となり、建設業・小売業が続く。人手不足倒産に限ると、労働集約型産業への集中が顕著だ。2024年の年間データでは、建設業が75件(前年比158.6%増)、運輸業が69件(同76.9%増)、サービス業他が88件(同60.0%増)と、いずれも大幅な増加を示した。

ビジネス視点:企業・経営者が直面する「賃上げジレンマ」

今回の人手不足倒産の増加が従来と異なる点は、「賃上げしたがゆえに倒産した」企業が急増していることだ。大企業が相次いで賃上げを実施する中、中小企業も賃上げ競争に巻き込まれるように労働市場のプレッシャーにさらされている。

問題の核心は価格転嫁にある。コスト増を販売価格に転嫁できなければ、賃上げは利益を直接圧迫する。全業種平均の価格転嫁率は40.6%にとどまっており、建設業は39.6%、物流業は32.6%と特に低水準だ。下請け構造が強固な業界ほど、元請けに対して価格交渉を行いにくい現実がある。

さらに、小・零細企業の脆弱性も浮き彫りになっている。2024年の人手不足倒産では、資本金1,000万円未満の企業が186件(前年比91.7%増)と大半を占め、体力の乏しい事業者が真っ先に倒産に追い込まれている構図だ。

「東京都との格差が80円〜90円あったとしても、それに準じてできなくはない。ただ、それが全員になった場合、払うベースが底上げされているから、売り上げとか客の数が伴わなければ本当に厳しい」(埼玉県川口市・飲食店オーナー)

東京に隣接する地域では最低賃金の「地域間格差」問題も深刻だ。東京の最低賃金と隣接県との差が80〜90円存在する場合、働き手は東京へ流出しやすくなる一方、地方の飲食店には東京並みの値上げを顧客に受け入れてもらいにくいという非対称な構造がある。

消費者・生活者視点:身近な店舗・サービスへの影響

人手不足倒産の増加は、消費者の日常生活にも直接的な影響を及ぼしている。

  • 飲食店の閉店増加:2026年上半期の飲食店倒産は帝国データバンクの調査で473件と過去最多を更新。地域に根ざした個人店・中小飲食店の消滅が加速している。
  • サービス品質の低下:人手不足で予約を断らざるを得ないケースが増え、消費者が受けられるサービスの量・質が低下しつつある。
  • 価格上昇圧力:人件費の上昇分が商品・サービス価格に転嫁された場合、消費者の生活コストが増す。一方で転嫁できない企業は倒産リスクにさらされる、という二重の問題がある。
  • 地域経済の空洞化:地方の飲食店や中小サービス業の閉店が続くことで、地域コミュニティの拠点が失われ、雇用環境も悪化する悪循環が生じやすい。

さらに、政府が検討中の食料品消費税減税も飲食業界に新たな打撃を与える可能性がある。食料品の消費税が引き下げられた場合、「家で食べる」コストが相対的に下がり、外食離れが進むと見られるためだ。

専門家・業界関係者の見解

東京商工リサーチは、賃上げ余力のない小規模事業者を中心に「賃上げ難型」の人手不足倒産が今後も続くと予測している。

帝国データバンクも同様の見解を示しており、外食産業では外国人労働者の新規受け入れのための在留資格証明書の交付停止が大きな懸念材料として浮上している。人手不足が深刻な外食産業にとって、外国人労働者は重要な担い手であり、その受け入れが滞ることは経営への直撃になりかねない。

食の専門家・山路力也氏はYahoo!ニュースエキスパートへの寄稿の中で、飲食業界が直面する課題について、消費税減税・家飲みシフト・人手不足という「三重苦」を指摘。安易な値下げ競争からの脱却と、付加価値向上による差別化が生き残りのカギだと指摘する。

また、帝国データバンクの調査でも、価格転嫁と賃上げの好循環を実現することが構造的解決の鍵であると分析されている。現状では価格転嫁率が全業種平均で4割程度にとどまっており、この数値を高めなければ中小企業の賃上げ余力は生まれにくいと指摘されている。

国際比較:海外でも深刻化する人手不足問題

人手不足による企業経営の困難は、日本固有の問題ではない。少子高齢化が先行する欧米諸国でも同様の課題が顕在化している。

  • 米国:コロナ禍後の「大退職時代(Great Resignation)」以降、労働市場のひっ迫が続き、特にホスピタリティ・外食・小売業での人手不足が深刻。最低賃金の引き上げが続く一方で、小規模ビジネスの廃業も増加している。
  • ドイツ:移民・難民政策を活用した労働力補完を進めてきたが、製造業・介護・建設業での人材不足は依然として深刻な経営課題となっている。
  • 韓国:日本と同様に少子化が急速に進行しており、外食・建設などの分野で人手不足が深刻化。外国人技能実習生への依存度を高める動きが見られる。

一方で、AIや自動化技術の活用による人手不足解消は、国際的な共通アジェンダとなっている。米国ではAIを活用した採用・シフト管理ツールの普及が急速に進み、英国でも飲食業の自動化投資が活発化している。日本においても、こうした国際的な潮流をいかに自国の中小企業に取り込むかが課題となっている。

今後の展望:AIと自動化が解決のカギを握る

人手不足倒産の増加が続く中、業界・政府・企業それぞれの対応が急務となっている。注目されるポイントは以下の通りだ。

  1. AI・自動化技術の導入加速:飲食業でのセルフオーダーシステムや配膳ロボット、建設業でのBIM(建築情報モデリング)・建設DXの活用など、省人化への投資が急速に進んでいる。中小企業における導入コストの低下と補助金制度の拡充が普及の加速要因になると見られる。
  2. 価格転嫁の促進:公正取引委員会や中小企業庁による下請け取引の適正化が進む中、価格転嫁率の向上が経営安定の前提条件となる。賃上げと価格転嫁の好循環を実現できるかが、業界全体の試金石となろう。
  3. 外国人労働者の受け入れ政策:在留資格の運用や特定技能制度の拡充が、特に飲食・建設・介護分野での人手不足緩和に直結する。政策の動向が業界の命運を左右する可能性がある。
  4. 賃金格差の是正:都市と地方の最低賃金格差の縮小が進まない限り、地方の中小事業者からの人材流出は止まらない可能性がある。地域別最低賃金制度のあり方が引き続き議論されると見られる。
  5. 倒産件数のさらなる増加リスク:現在のペースが続けば、2026年度通年の人手不足倒産は過去最多を大幅に更新する可能性が高い。金利上昇局面も加わり、中小企業の経営環境は一段と厳しさを増すことが懸念される。

まとめ:この問題の3つのポイント

  • 📌 2026年度上半期の人手不足倒産は過去最多240件。主因は「人件費高騰」(130件)で、5年連続増加。飲食・建設・サービス業など労働集約型産業を直撃している。
  • 📌 賃上げしたがゆえに倒産する「賃上げ疲れ」型の倒産が急増。価格転嫁ができない中小・零細企業が特に苦境に立たされており、資本金1,000万円未満の小規模事業者が被害の大半を占める。
  • 📌 AI・自動化・外国人労働者活用・価格転嫁促進が構造的解決のカギ。政府・業界・企業が三位一体で取り組まなければ、人手不足倒産は今後も高水準で推移する可能性が高い。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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