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核融合スタートアップが60.6億円調達、日本の夢のエネルギー実現へ

核融合(フュージョン)発電の実証を目指すStarlight Engine(スターライトエンジン)が、三井不動産・関西電力CVC・グローバルブレインなど17社から総額60.6億円を調達。2038年の発電実証、2040年代の商用運転を目指すFASTプロジェクトを加速。日本の次世代エネルギー戦略と脱炭素化に向けた歴史的な一歩として注目を集めている。

日本の「夢のエネルギー」開発が新たなステージへ

AI時代の到来によるデータセンターの急増、電動化社会への移行が加速する中、世界はかつてない規模のエネルギー需要の拡大局面を迎えている。太陽光・風力などの再生可能エネルギーだけでは補いきれない電力需要を、「究極のクリーンエネルギー」とも呼ばれる核融合(フュージョン)エネルギーで解決しようとする動きが、国内外で急加速している。

そんな中、2026年7月15日、核融合発電の実証を目指す国内スタートアップStarlight Engine株式会社(スターライトエンジン、東京・大田区)が、第三者割当増資により総額60.6億円の外部資金を初めて調達したと発表した。創業1年余りの同社にとって初の外部調達となるこの資金は、30年代の発電実証という野心的な目標に向けた重要な布石となる。

Starlight Engineとは何者か

Starlight Engineは、核融合関連スタートアップの京都フュージョニアリング(東京・大田)が2025年4月に設立した子会社だ。世界の核融合開発で最も主流とされる磁場閉じ込め方式の「トカマク型」での核融合発電を目指している。

FASTプロジェクト(Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)は、2030年代のフュージョンエネルギー発電実証を行う民間主導の国内プロジェクトだ。重水素(Deuterium)と三重水素(トリチウム:Tritium)による核融合反応(D-T)による燃焼プラズマの生成・維持を行うとともに、エネルギー変換、燃料システムを一体化したフュージョンエネルギー発電システムを実証するものだ。

燃料面では、重水素は海水から抽出可能、トリチウムは自己増殖が可能なため安定確保が見込まれ、燃料や生成物に温室効果ガスを含まず、高レベル放射性廃棄物も発生しない。フュージョンエネルギーは、日本のエネルギー安全保障とカーボンニュートラル社会の両立を支える次世代基幹エネルギーとして期待が高まっている。

60.6億円調達の全容:17社が集結した異例の資金調達

今回の調達では、グローバル・ブレイン株式会社がリード投資家を務め、電力、建設、不動産、通信、金融、素材メーカー、大学系ベンチャーキャピタル、海外ベンチャーキャピタルと、幅広い業界を代表する合計17の新たな投資家を迎えた。

出資企業・ファンドは以下の通りだ。

  • グローバル・ブレイン株式会社(リード投資家)
  • 三井不動産株式会社
  • KDDI新規事業育成5号投資事業有限責任組合
  • 東急建設株式会社
  • 富国生命保険相互会社
  • ソニーフィナンシャルベンチャーズ&グローバル・ブレインフロンティア株式会社
  • AV(旧Airbus Ventures)
  • 京都大学イノベーションキャピタル株式会社
  • 株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ
  • 大和企業投資株式会社
  • 株式会社フジクラ/古河電気工業株式会社
  • 株式会社みずほ銀行/株式会社三菱UFJ銀行
  • BRICKS FUND TOKYO(ほか1者非公表)

創業期の調達としては異例の規模となる。慣性閉じ込め方式の「レーザー型」で開発するEX-Fusion(大阪府吹田市)が2023年に18億円、らせん構造の「ヘリカル型」を手掛けるヘリカルフュージョン(東京・中央)が同年8億円を調達していることと比べても、その規模の大きさが際立つ。

調達資金の使途と今後のロードマップ

調達資金は、FASTの工学設計要素技術の開発・実証人員の拡充、大学・研究機関との共同研究、サプライチェーンの構築などに充てられる。

同社は現在、比較的小規模な組織だが、今後2年間で従業員数を約200人まで拡大する計画だ。計画の総事業費は1兆円規模と見込まれており、2028年から2029年にかけては建設準備や長納期品の先行調達を始め、1,000億円オーダーの大型資金調達も実施する予定だ。

スケジュールは以下の通り整理される。

  1. 2027〜2028年:候補地の評価・決定
  2. 2028年以降:建設開始、大型資金調達
  3. 2035年:FAST運転開始
  4. 2038年:発電実証
  5. 2040年代:商用運転開始

国内初の「実証炉候補地」全国公募もスタート

同社は7月15日より、実証炉「FAST」の候補地の公募を開始した。核融合発電実証施設の候補地を全国公募する取り組みは国内初となる。対象は都道府県と政令指定都市で、公募期間は約3カ月。候補地の選定では、敷地面積(60ヘクタール以上)や地質、災害リスクなどの「土地・自然条件」に加え、電力系統、用水、排水、道路、港湾といった「インフラ・建設条件」を評価する。

すでに47都道府県のうち17の広域自治体がFASTの誘致に関心を示しているという(具体的な自治体名は非公表)。

ビジネス視点:大企業・投資家はなぜ今、核融合に賭けるのか

今回の出資陣に、電力・不動産・通信・金融・素材といった異業種の大手企業が勢ぞろいしたことは、単なる「夢への投資」ではなく、日本産業界全体が核融合エネルギーを現実的なビジネスとして捉え始めたことを示している。

三井不動産は「産業デベロッパーとして、新たな産業の創造と社会実装に向けた挑戦を重要な取り組みと捉えている」とし、Starlight Engineの構想力と実行力に大きな期待を表明した。KDDIは「通信基盤・AI基盤をはじめとするグループのアセットを活かし、フュージョンエネルギーの社会実装を後押し」するとしている。

フュージョンエネルギーは政府の成長戦略における戦略17分野の一つに指定されており、2040年までに官民合わせて3兆1000億円の投資が計画されている。Starlight Engineはこの官民投資の受け皿となる中核企業として期待されている。

フジクラ・古河電気工業といった電線大手が出資していることも注目に値する。高温超電導(HTS)コイルなどの先端素材・部材は核融合炉の心臓部を担うものであり、これらの企業にとってはサプライチェーンへの先行投資という戦略的意味合いがある。

消費者・生活者視点:核融合エネルギーが実現したら何が変わるか

核融合発電が商用化した場合、私たちの生活にはどのような変化が生じるのだろうか。

  • 電気料金の安定化:化石燃料価格の変動に左右されない、安定した電力供給が可能になる可能性がある。
  • 脱炭素社会の加速:CO₂を排出しない大規模発電源として、カーボンニュートラルへの移行を後押しする。
  • エネルギー安全保障:燃料を海外に依存する日本のエネルギー構造を根本から変える可能性がある。重水素は海水から得られ、資源の偏在がない。
  • 地域経済の活性化:実証炉建設地には大規模な雇用・研究拠点が生まれ、地域産業の高度化が期待される。

経営トップの言葉:日本から世界へ

4月から社長に就任した菊地清貴氏(元三菱商事常務執行役員)は、7月15日の発表会で

「世界に先駆けて日本でフュージョンエネルギーの産業を生み出す」
と力強く語った。副社長には前大阪府四條畷市長の東修平氏が就任し、産業界出身と行政経験者による強力な経営体制を築いている。

国際比較:世界の核融合開発競争は今

核融合エネルギー開発は、日本だけでなく世界規模で急加速している。

  • 米国:Commonwealth Fusion Systems(CFS)やTAE Technologies、Helion Energyといった民間スタートアップが数千億円規模の資金を調達済み。MicrosoftはHelionとの電力購入契約を締結したことでも話題を呼んだ。
  • 英国:Tokamak Energy社などが政府支援を受けて開発を進めており、EUもITERプロジェクトへの資金投入を継続している。
  • 中国:国家主導でトカマク型装置の研究を急ピッチで進めており、実験炉の運転実績も積み上げている。

こうした国際競争の中で、Starlight Engineが掲げる「民間主導・産学連携」モデルは日本独自のアプローチとして注目される。国内大学(京都大・東京大・名古屋大・慶應義塾大など)との共同研究を軸としながら、産業界を巻き込んでサプライチェーンを国産化する戦略は、技術の海外流出を防ぎ、日本が核融合産業のグローバルリーダーとなる道を切り拓くものだ。

今後の展望と注目ポイント

Starlight Engineは発電実証までに1兆円規模の資金が必要と見込んでおり、まずは数年内をめどに民間企業から1000億円規模の調達を目指す。政府は30年代の発電実証を掲げ、40年度までに3兆1000億円を官民で投じるとしており、Starlight Engineの動向は日本の国家エネルギー戦略と直結している。

今後の注目ポイントは以下の3点だ。

  1. 実証炉候補地の選定(2027〜2028年予定):どの自治体が名乗りを上げるか。地域経済・インフラ整備の観点からも大きな関心を集めるだろう。
  2. 1000億円規模の次回資金調達(2028〜2029年予定):政府系ファンドや海外投資家の参画規模が、プロジェクトの信頼性を測るバロメーターとなる。
  3. 国内競合との関係:EX-Fusion(レーザー型)やヘリカルフュージョン(ヘリカル型)との技術的競争・連携がどう展開するかも日本の核融合産業全体の行方を左右する。

まとめ:この記事の3つのポイント

  • 🔋 Starlight Engineが60.6億円を調達:三井不動産・関西電力CVC・グローバルブレインなど17社から。創業期スタートアップとして異例の規模であり、日本の核融合開発に向けた官民の本気度を示す。
  • 🏗️ 実証炉「FAST」の候補地公募が国内初スタート:2035年の運転開始・2038年の発電実証・2040年代の商用化を目指すロードマップが明確化。総事業費1兆円規模の巨大プロジェクトが具体的フェーズへ。
  • 🌏 AI時代のエネルギー問題解決の切り札として期待:CO₂ゼロ・燃料の海外依存なし・大規模安定発電を実現できる核融合は、脱炭素とエネルギー安全保障を同時に解決しうる次世代電源として国際競争が激化している。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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