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トヨタ、2028年EV年産90万台へ拡大——日本勢EV戦略の新章

トヨタ自動車が2028年の電気自動車(EV)生産台数を約90万台とする計画を部品メーカーに通知した。かつて「2026年に世界150万台販売」を掲げたが需要の伸び悩みで下方修正。ハイブリッド車拡大との二本柱戦略で脱炭素とグローバル競争に挑む。固体電池や欧州現地生産など次世代投資も加速している。

なぜ今、このニュースが重要なのか

世界の自動車産業が電動化の大波に揺れるなか、トヨタ自動車が2028年のEV生産台数を約90万台とする計画を主要部品メーカーに伝えたことが明らかになった。かつて「2026年に世界販売150万台」という高い目標を掲げていたトヨタだが、EV市場の需要鈍化を受けて目標を現実路線へ修正。それでも90万台という規模は、2024年実績(約14万台)と比較して6倍以上の大幅拡大であり、日本勢のEV戦略における最重要マイルストーンと位置付けられる。脱炭素化の加速、エネルギー政策の転換、グローバル競争の激化という三つの圧力が重なる今、この計画の意味を多角的に読み解く。

計画の詳細:数字で見るトヨタのEV戦略

トヨタ自動車は2028年のEV生産を約90万台とする計画を部品会社に伝えた。2023年には「2026年で世界販売150万台」と掲げていたが、販売が計画に到達せず見直しを進めている。

計画の変遷をまとめると、以下のようになる。

  • 2021年12月発表:2030年までに30車種のBEVを展開し、同年にグローバルでBEVを350万台、うちレクサスBEVを100万台販売する計画。2022〜2030年の9年間に研究開発・設備投資としてBEVに4兆円、HEV/PHEV/FCEVに4兆円、合計8兆円を投資する。
  • 2023年時点:2026年で世界EV販売150万台を目標に設定
  • 2025年時点の修正:当初2026年に年150万台のEVを生産する計画だったが、現在は同年に約80万台を生産する見通しに——当初計画比で約50%減となった。
  • 最新計画(2026年発表):2028年に約90万台のEV生産を目指す

2024年のトヨタのEV販売は前年比で大幅増を記録し、グローバルで約14万台のBEV・FCEVを納車した。ただし、これは総販売台数1,000万台超の2%未満にとどまる水準だ。90万台という2028年目標は、現実を踏まえた慎重な積み上げ型の計画と言える。

ハイブリッドとの二本柱:トヨタの全方位戦略

注目すべきは、EV拡大計画がハイブリッド車(HV)の大増産と並行して進められている点だ。トヨタは米国を中心にエンジンや部品工場に投資し、2028年のHV生産台数を2026年計画比3割増の670万台規模に引き上げる。欧米でEV普及政策の縮小が相次ぎ、燃費や価格面で優位性のあるHVの需要が伸びており、車大手は環境車戦略を大きく修正しはじめた。

昨年トヨタは世界で1,053万台を販売し、そのうち490万台が電動車だった。うち443万台は従来型ハイブリッド車で、2027年にはHVとPHEVの生産台数を500万台に増産、2028年までに670万台まで引き上げる計画だ。この急増によりトヨタの販売に占めるHVの割合は現在の約50%から約60%に上昇する見込みとなっている。

トヨタの多経路アプローチは長らく「積極性が不十分」と批判されてきたが、今となっては現実的な判断と見られている。同社はBEVセグメントの需要減速に過度に晒されることなく、収益性の高いHV事業を維持しながら将来技術への投資資金を確保してきた。

グローバル生産体制の整備

90万台という目標達成に向け、トヨタは世界各地で生産拠点の整備を進めている。

欧州:チェコ工場でEV現地生産を開始

トヨタは2028年からチェコのコリン工場でEVの生産を開始する。これはEU域内での初のEV生産となり、より厳しい排出規制に備えた動きだ。日本経済新聞によると、チェコの子会社TMMCZ(トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・チェコ共和国)で年間約10万台を生産する計画とされる。

北米:ハイブリッド増産と並行投資

米国ではケンタッキー州のジョージタウン工場などに対する9億1,200万ドルの投資が発表され、3本の新生産ラインを設け年間約50万台の生産能力増強を図る。これらの新ラインは2027年と2028年に稼働を開始する予定だ。

固体電池への大型投資

136億ドルの投資を背景に、トヨタは2027年〜2028年に固体電池の商業化を目指しており、10分での充電と最大1,200km(約750マイル)の航続距離を実現するとしている。

ビジネス視点:企業・経営者への意味

トヨタの90万台計画は、自動車産業のエコシステム全体に大きな波及効果をもたらす。

  • 部品サプライヤーへの影響:計画が部品会社に伝達されたことは、バッテリー、モーター、パワーエレクトロニクスなどのサプライチェーン全体が新たな生産量に対応する設備投資を求められることを意味する。
  • 競合他社への圧力:トヨタは2027年までにEVモデルをグローバルで3倍に拡大し、EV生産台数を約100万台——2024年比で7倍——に増やす計画を持つ。この規模拡大は競合他社との競争において価格交渉力や製造コスト削減で有利に働く。
  • 投資家・株主への信号:目標を現実路線に修正しながらも着実な拡大ロードマップを示したことで、過度な楽観論ではなく実行可能な計画として市場の信頼を得やすくなる。
  • 多様なパワートレイン戦略の優位性:自動車電動化における中心的な逆説を浮き彫りにしている。業界の言説はBEV一択の未来を強調する一方、消費者の購買行動は段階的な技術移行への選好を示している。ハイブリッドは航続距離の不安や充電インフラへの依存なしに燃費改善と排出削減を実現し、主流の購買層に訴求している。

消費者・生活者視点:私たちの生活への影響

トヨタのEV拡大戦略は、消費者にとっても具体的な変化をもたらす。

  • 選択肢の拡充:トヨタは2028年までに米国向けに最大7種類の全電気自動車モデルを投入する計画だ。日本市場でも複数のEVモデルが順次投入される見通しで、消費者の選択肢が大幅に広がる。
  • 価格競争力の向上:生産規模の拡大により、製造コストの低下と価格競争力の向上が期待される。特に2025年3月時点でBEVの平均取引価格は59,200ドルと全新車平均の47,500ドルを大きく上回っており、スケールメリットによる価格低下は消費者普及を後押しする。
  • 充電インフラ整備の加速:EV生産規模の拡大は、充電インフラへの社会的投資を促す効果がある。普及台数が増えれば充電スポットの拡充が経済合理的となり、EV利用者の利便性が向上する。
  • ハイブリッドの継続提供:EV一辺倒でなく、HVやPHEVも継続拡充される「全方位戦略」により、EVに不安を感じる消費者もトヨタブランドを選択し続けられる環境が維持される。

専門家・業界関係者の見解

トヨタの計画修正と新目標設定については、業界から多様な評価が寄せられている。

「現時点では主に国内工場への取り組みが始まったばかりだが、年間8万台の生産能力と、3モデルの改良に相当する余剰開発能力を創出することができた」——トヨタ幹部(Assembly誌より)

「リードタイムの短縮への取り組みは、EVの生産準備とプロジェクト見直しの柔軟性を高めるものでもある。これにより実際の需要変動により効果的に対応し、直前の投資判断も可能になる」——トヨタ幹部(Assembly誌より)

市場環境については、国や一部の欧州政府がかつてBEVを優遇していた補助金や規制を縮小していることへの対処として、ハイブリッドへの投資倍増が進められているという見方がある。

また業界アナリストからは、2026年に実施されたアフターマーケット業界調査によれば、EV投資をめぐる不確実性が自動車産業の方向性を左右する主要因として浮上しており、広範なアフターマーケット需要は堅調であってもEVに対するアプローチは慎重かつ分断化されていると指摘されている。

国際比較:世界の主要メーカーのEV戦略

トヨタの計画を、主要競合他社の動向と比較すると、その位置付けがより鮮明になる。

テスラ(米国)

2024年の世界販売は約181万台で、EV専業メーカーとして依然トップを維持。しかし同年は前年割れとなり、価格引き下げ攻勢でも成長鈍化が鮮明になっている。

BYD(中国)

2024年の新エネルギー車(EV+PHEV)販売は427万台超を記録し、純粋なEVでもテスラに迫る規模。低コスト生産と垂直統合モデルで急成長を続け、日系メーカーにとって最大の脅威となっている。

フォルクスワーゲングループ(欧州)

2024年の欧州EV需要低迷を受けて一部工場閉鎖を検討するなど戦略の見直しを迫られており、EV一本足打法のリスクが顕在化した。

日産・ホンダ(日本)

日産は統合協議が進むホンダとともにEV開発で協力を模索。両社ともトヨタに比べてEV投資規模では後れを取っており、日本勢全体の競争力強化が課題となっている。

トヨタはEU域内での現地生産を最良の長期環境政策対応策と捉えているとされ、EUドメインでのサプライチェーン合理化、物流関連排出削減、コスト競争力の強化を狙っている。

今後の展望と注目ポイント

トヨタの2028年EV90万台計画をめぐる今後の焦点を整理する。

①固体電池の商業化が鍵

トヨタはEV拡大と同じ時期に、次世代の固体電池セルの生産を段階的に実装する計画を日本の規制当局から承認されており、固体電池セルを含む次世代セルの生産を2026年から開始する。固体電池の量産化に成功すれば、航続距離と充電速度で圧倒的な競争優位を獲得できる可能性がある。

②中国市場での立て直し

世界最大のEV市場である中国では、BYDをはじめとする地場メーカーに押されてトヨタのシェアが低下傾向にある。90万台計画の実現には、中国市場での競争力回復が不可欠だ。

③トランプ政権の関税政策リスク

トランプ氏が大統領職についている限り、トヨタはハイブリッド車への投資を倍増させる見込みで、EVに全面注力した後に方針転換を余儀なくされた多くのメーカーと比べ、多様なパワートレインへの投資がいかに賢明であったかを示している。一方で、関税政策はサプライチェーンコストや投資判断に直接影響し、計画の修正を迫る可能性がある。

④全固体電池・次世代モデルの投入スケジュール

全体生産量が維持されれば、トヨタのロードマップは2020年代末までにグローバル生産の35%を電動化するという劇的なスケールアップを示している。bZシリーズの拡充や次世代プラットフォームの展開タイミングが、計画達成を左右する重要変数となる。

まとめ:この記事の3つのポイント

  • 【計画修正でも前進】トヨタは「2026年に150万台」という過大目標を現実路線に修正しながらも、2028年の90万台という具体的なマイルストーンを設定。2024年実績比6倍超の拡大は、着実なEV戦略の加速を示す。
  • 【EV+HVの二本柱戦略】EV90万台と並行してHV670万台という「全方位戦略」を維持。競合他社のEV一本足打法が壁に当たるなか、多様なパワートレインへの分散投資がリスクヘッジとして機能している。
  • 【固体電池・欧州現地生産が次の焦点】2027〜2028年の固体電池商業化、チェコ工場でのEV現地生産開始など、次世代競争力を左右する施策が同時並行で進行中。これらの成否が長期的なグローバル競争における日本勢の優位性を決定づける。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

タグ

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