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テクノロジー

ファーウェイAIチップが60%増収へ、Nvidiaの牙城崩す

ファーウェイが2026年のAIチップ売上高を120億ドル(前年比60%増)と予測。Ascend 950PRの量産開始とDeepSeek V4との連携により、ByteDance・Alibaba・Tencent等の大手企業から大量受注を獲得。米国の輸出規制が逆風となったNvidiaの代替として、中国AI半導体市場を席巻する構図が鮮明になっている。

米制裁が生んだ逆説:ファーウェイAIチップが急成長の時代へ

2026年、グローバルのAI半導体市場に大きな地殻変動が起きている。ファーウェイ(Huawei)が2026年のAIチップ売上高を約120億ドルと予測しており、これは2025年の75億ドルから実に60%以上の急増に相当する。米国による輸出規制という「逆境」が、中国国産AIチップ産業の急速な台頭を後押しする皮肉な構図が世界の注目を集めている。

かつてNvidiaのGPUに依存していた中国のAI開発エコシステムは、輸出規制の強化を受けて一変した。その最大の受益者こそが、Ascendシリーズを擁するファーウェイである。DeepSeek V4との連携、ByteDanceやAlibaba・Tencentからの大規模発注など、複数の要因が重なり、ファーウェイのAIチップ事業は前例のない急成長局面を迎えている。

Ascend 950PRとは何か:技術スペックと競合比較

革新的なスペックで市場を席巻

ファーウェイは正式にAscend 950PRを発売した。これは1.56ペタフロップスのAI推論チップで、NvidiaのH20に対してFP4性能で2.8倍という圧倒的なパフォーマンスを誇り、アメリカの半導体企業の優位性に対する中国メーカーによる最も積極的な挑戦と位置付けられている。

このチップはDeepSeek V4などの先進モデルとの動作に最適化されており、最大2PFLOPSの演算性能と128GBの国産メモリを搭載している。

ファーウェイはHBMを自社内製化しており、米国の輸出規制への対応としてサムスン電子やSKハイニックスなどの外部ベンダーへの依存を解消した。Ascend 950シリーズには推論向けの「HiBL 1.0」とトレーニング向けの「HiZQ 2.0」という独自HBMソリューションが搭載される予定だ。

Nvidiaとの性能比較

ファーウェイのAscend 950PRは、中国で入手可能なNvidiaのH20チップを上回るパフォーマンスを発揮するが、米国の規制で中国への販売が禁じられているより高性能なH200チップには及ばないとされている。

価格面では、DDRメモリ搭載の標準版950PRが約5万元(約6,900ドル)、HBMメモリ搭載の上位版が約7万元で販売される見込みだ。NvidiaのH100が構成によって2万5,000〜4万ドルで取引されることと比較すると、特に推論ワークロード(AI需要の最も急成長しているセグメント)においてファーウェイの経済性が際立つ。

ただし、グローバル最高水準との比較では依然として差がある。Nvidiaの制限のない製品(B200やBlackwellアーキテクチャ)に対しては、950PRはメモリ帯域幅やトレーニングワークロードにおいて特に、まだ一世代後れを取っている。

売上高120億ドルの根拠:受注データと生産計画

大規模受注が証明する市場の信任

ファーウェイは今年受領した注文数に基づき、AIチップの売上高が2025年の75億ドルから120億ドルへと60%増加すると見込んでいる。

この成長を牽引しているのは、2026年3月に量産が開始されたAscend 950PRプロセッサへの需要であり、同社は2026年第4四半期に950DTチップのアップグレード版の発売も計画している。

Reutersの報道によれば、ByteDanceとAlibabaがAscend 950PRの大口発注を計画しており、ByteDance単独でも2026年中にファーウェイのAscendチップに56億ドル超を投じる予定とされている。

ファーウェイは2026年に約75万個のAscend 950PRを出荷することを目標としており、量産は2026年下半期に本格化する計画だ。

DeepSeek V4との連携が生んだ需要急増

DeepSeekのV4がファーウェイのAscend 950シリーズ向けに最適化されたことで、ByteDance、Tencent、Alibabaはその発表からわずか数日のうちに新たなチップ発注を開始した。

DeepSeekが自社モデルをファーウェイのハードウェア専用に最適化するという決断は、中国の国産半導体エコシステムへのシフトを象徴しており、ファーウェイはAscend SuperNodeインフラがDeepSeek V4モデルを完全にサポートすると表明している。

ビジネス視点:企業・経営者が知るべき市場再編の衝撃

中国AIインフラ市場で60%シェア獲得を射程に

NvidiaがハイエンドのAIチップ販売から事実上撤退した後、ファーウェイは2026年末までに中国AI市場で60%のシェアを獲得すると予測されている。Ascend 950PRの量産と国内AI向けソリューションへの強い需要がその背景にある。

長期的に最も重大な意味を持つのは、二つの異なるAIインフラエコシステムの台頭だ。一方はNvidia・AMD・インテルのシリコンを基盤に西側市場へサービスを提供するもの、もう一方はファーウェイのAscendチップを基盤に中国および友好国にサービスを提供するものである。

ファーウェイは明確なロードマップも示している。同社は将来の方向性を明確にしており、2026年後半にはAscend 950DTの生産開始、さらに2028年までにAscend 960・970を順次リリースする計画を持っている。

CUDAの壁を崩すソフトウェア戦略

NvidiaのCUDAエコシステムはこれまで最大の「堀」であり続けてきた。中国のAIラボはNvidiaチップにアクセスできる状況でも、ワークフロー全体をCUDAに依存して構築しており、代替ハードウェアへの移行はコードの大量書き直しを意味する高いハードルがあった。Ascend 950PRはこの方程式を変えようとしている。

950PRのCANN NextソフトウェアスタックはCUDAプログラミングを模倣しており、現在NvidiaのコードでAIラボを運用している開発者の移行コストを大幅に引き下げている。

消費者・生活者視点:私たちの生活への影響

このAIチップ競争の激化は、一般の生活者にとっても無関係ではない。中国のAIサービスがより豊富なコンピューティングリソースを手に入れることで、翻訳・検索・コンテンツ生成・動画推薦などのサービスが高度化・低コスト化する可能性がある。

クラウドプラットフォームへの急速な展開により、数百万人のユーザーや開発者がAI処理能力へのアクセスを拡大しており、AIサービスへの需要とそれを支えるチップへの需要が増大している。

また、国際的に見れば、ファーウェイのAIチップが韓国・東南アジア・中東に展開されることで、これらの地域におけるAIサービスの選択肢が広がる可能性がある。ファーウェイ韓国のValian Wang CEO は記者会見で、2026年に韓国でAIコンピューティングカードとAIデータセンターソリューションを正式展開する計画を発表している。

専門家の見解:業界アナリストが読む技術競争の本質

業界の専門家たちは、ファーウェイの進歩を認めながらも、課題も率直に指摘している。

バーンスタイン・リサーチの半導体アナリスト、Stacy Rasgon氏は「チップ単体のレベルでは、ファーウェイは本質的にNvidiaの3年前の水準に追いついた」と述べ、「真の問題はBlackwellとの差を縮められるかどうか、そしてソフトウェアエコシステムがCUDAの成熟度に追いつけるかどうかだ。ハードウェアは印象的だが、採用を決定するのはソフトウェアの物語になる」と指摘している。

また、製造面での課題として、先端チップ製造装置に対する米国の制限により中国の製造能力が制限されているため、出荷量は需要を下回る可能性が高いという指摘もある。

ソフトウェア面での課題も残る。英フィナンシャル・タイムズによれば、Ascendを使用する企業からソフトウェアのバグやNvidia製品からの切り替えの難しさといった不満が相次いでいると報じられており、チップの安定性、チップ間通信速度、独自ソフトウェアCANNの性能不足などが指摘されている。

国際比較:グローバルAI半導体覇権争いの最前線

米国の輸出規制と中国の技術自立

トランプ政権が2025年12月初旬、一定条件のもとで「認定顧客」向けにNvidiaのGPUを中国などへ輸出する許可を付与したものの、米商務長官のHoward Lutnick氏は中国企業が中国政府の許可取得に困難を抱えているため、H200は依然として中国に一台も販売されていないと述べている。

DeepSeekがV4をファーウェイのシリコン専用にチューニングしたことは、米国製ハードウェアから意図的に離脱する動きであり、北京は国内AIインフラを国家的優先事項として長期間推進してきた。

韓国・東南アジア・中東への展開

ファーウェイは950PRの国際展開を公式に発表していないが、業界アナリストはNvidiaのGPU調達が困難な中東や東南アジア諸国への販売拡大を見込んでいる。サウジアラビア・UAE・インドネシアは、国家AI戦略とファーウェイとの既存インフラ関係から、最有力の初期展開先と見られている。

製造の制約:SMICとEUV問題

ファーウェイと同様に米国の取引制限リストに加えられているSMICは、オランダASMLのEUV(極端紫外線)露光装置を購入できず、DUV(深紫外線)露光装置とマルチパターニング技術を用いて先端半導体を製造しているとみられており、TSMCと比べると性能面で劣るとされている。

ファーウェイが2026年に計画する75万個の950PR出荷は、SMICが先端ノードの製造能力の15〜20%をこの単一製品ラインに割り当てることを必要とし、2025年に生産されたAscend 910Bおよび910Cの20〜30万個から大幅な増加となる。

今後の展望:2028年まで続くロードマップと注目ポイント

ファーウェイはAIチップの長期ロードマップを明確に示している。ファーウェイの輪番董事長・徐直軍氏は「ファーウェイ・コネクト2025」で、2026年第1四半期に推論向けの「Ascend 950PR」、2026年第4四半期にAI学習向けの「Ascend 950DT」、2027年第4四半期に「Ascend 960」、2028年第4四半期に「Ascend 970」を順次リリースすると発表した。

Atlas 950 SuperPoDはAscend 950チップを8,192個搭載し、FP8で8 EFLOPS、FP4では16 EFLOPSの処理速度を実現する予定で、2026年第4四半期の発売を目指している。ファーウェイはこのシステムが2026〜2028年にかけて世界最高の演算能力を持つスーパーポッドになると強調している。

一方で供給制約は依然として大きなリスクだ。中国のクラウドプロバイダー全てが今日Ascend 950チップを望んでいたとしても、ファーウェイはそのペースで供給することができない。先進チップ製造装置への米国の輸出規制が、中国にこれらのプロセッサを大量生産するために必要な最先端ツールへのアクセスを妨げている。

まとめ:3つのポイントで読み解くファーウェイAIチップ急成長

  • 売上高120億ドルの現実味:Ascend 950PRの量産開始(2026年3月)と、ByteDanceによる56億ドル超の大口発注など具体的な受注実績に裏打ちされた成長予測。2025年比60%増の目標はすでに受注ベースで視野に入っている。
  • 技術・ソフトウェア両面での急追:CANN NextによるCUDA互換対応、HBMの自社内製化、そしてDeepSeek V4との戦略的連携により、中国のAI開発者がNvidiaから乗り換える際のコストが大幅に低下しつつある。ただし、安定性・ソフトウェア成熟度・製造歩留まりに関する課題は依然として残る。
  • 地政学的テクノロジー競争の加速:米国の輸出規制が中国の技術自立を加速させるという逆説的な構図が確立されており、2028年に向けてのAscend 960・970リリースを通じて、AIチップの「西側陣営 vs 中国陣営」という二極化が世界のデータセンター・AI産業に深い影響を与え続けると見られる。

参考情報


著者プロフィール

伊東雄歩(いとうゆうほ) / ゆぽゆぽ

株式会社ウォーカー代表取締役 / MENSA会員 / NLPマスタープラクティショナー

IQ130超のADHD経営者。「社会不適合」ゆえに会社員を2年で挫折し、フリーランスを経由せずいきなり起業。訴訟4回、2000万円の損失、役員の裏切り、オフショア開発の地獄を乗り越え10年生き残る。心理学・教育学に1000万円投資し、独自の「成長力学」を確立。現在は生成AI教育に注力し、「3年を2日に変える」AIプログラミング2Daysキャンプを全国展開中。AIフレンズコミュニティを運営。

夢は「世界征服」——世界の常識を変え、新しい価値観を提示すること。

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